本日、国指定重要文化財中村家住宅は臨時休業

山下幸二

2023年09月01日 08:09




本日、国指定重要文化財中村家住宅は臨時休業とのことです。

台風11号の影響はあまりなさそうですが、
中村家住宅は臨時休業になっていて、
不思議に思う人もいるかもしれないので、
少しだけ解説のようなものを書いておこうと思います。

300年ものの古い家なので、
当然の如く、老朽化しています。

台風対策は300年間で少しずつ改良されてきたかもしれませんが、
さすがに今の建築技術とは比べ物になりません。

トップの写真は、台風対策の様子です。
雨戸は風除けのためすべてを締め切り、
風の影響を受ける部分はしっかりと固定します。
高倉はつっかえ棒で固定しています。

台風が来るとなると、ここまで台風対策しなければ、
文化財を維持することができないわけです。


台風対策の基本は安全なうちに行うことです。
なぜなら、台風がどのような動きをするか、
予測はできても、その予測が必ずしも当たるとは限りません。

また、古い建物だけに滑りやすい箇所があったりと強風の中で台風対策をするとなると、
台風対策するスタッフのリスクが高まります。
命よりも大切なものはありません。
中村家住宅は入場料は、中村家住宅をよく知る僕からするととんでもなく格安です。
ただし、中村家住宅を知らない人からすれば、
「ただの民家」を観るだけに入場料を支払うのを躊躇う気持ちは分からなくはありません。

あとは、裏方面ですが、
維持管理の面のことも知っているだけに、本当に格安だなぁと思います。
とはいえ、一般のお客さんはそこまで知って入場するわけではないので、
今の価格より上げると入らない人もいるだろうなぁとも思います。

優良価格設定ゆえに、スタッフは少数精鋭で行っている上で、
スタッフの生活も保証しないといけないとなると、
台風の様子をギリギリまでみて台風対策するというのがなかなかに困難です。
今回の台風11号を例に挙げれば、深夜まで台風情報の様子を見て、
急に台風対策が必要だとなった場合、深夜に台風対策を始めると、
暗闇での作業になり、怪我などのリスクが高まることになります。


最近の家は自然災害に打ち勝つためにいろいろな工夫がされていますが、
中村家住宅は自然と共に生きていく家です。
自然の力を借りる代わりに、自然の力に対する対策もしなければいけません。


ガイドする人間からすると、
雨の中の中村家住宅も悪くないのですが、
説明するためにいろいろなところを見てもらいたいので、
大雨の中のガイドはなかなか厳しいところがあります。
大雨でなくとも小雨がポツポツと降ったり、
雨が降ったり止んだりの天気だと、
バリアフリーの時代の家ではなく、
また、琉球石灰岩が多く使われている建築物なだけに、
雨中や雨が上がってすぐだと足元が滑りやすくなっていることがあり、
台風の風は急に強くなることがあるので、
台風が近くにある時のガイドは緊張感が高まります。


中村家住宅は素晴らしい家ですが、
便利さで言えば、今の家の方がよっぽど便利です。
裏を返せば、それほど不便な家を維持管理し、
国指定重要文化財として提供してくれている中村家住宅は本当に素晴らしいなと思います。

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